それは幼い頃にかけたおまじないの代償 ほんの興味本位 よくある類のおまじない

 憧れだったあの娘をいじめたあいつを許さない

  理由としてはそれくらいだが それ以上はいらない

「やめてやれよ」

 って言って助けてあげられるくらいの 強さも勇気も何も無い 格好悪いよな本当に

仕方ないって言い訳 そんな僕が頼った 今さら珍しくも無い 学校の怪談話

命と交換条件 この命と引き換えに 願い事をひとつだけ 叶えてくれるおまじない  

 

おまじないは無事に終わり 次の朝の教室 

             いじめっ子は転校していった あの娘はもう大丈夫だろう

噂通りに進むなら きっとこの後カミサマが 僕の命を受け取りにやってくるに違いない

呆気ないし薄っぺらい人生だったと苦笑い

    全然後悔していない って最後くらいは強がりを

あの娘が笑っていられるなら 僕はそれで良しとしよう 

 さあ早く終わりにしてくれよ って未練や期待を閉じ込めながら

 

それから一週間、一ヶ月、一年経っても何も起きず

  やっぱりただの噂話 そうであって欲しかったのに  そんな期待は大はずれ

あれからもう百二十年 言葉にすればあっという間 随分季節は流れたが

 僕の姿は変わらない 景色も時間も流れたが

               僕の時間はいまだに あの教室で止まったまま

親しい人もいなくなってもう誰とも話していないや

 生きる権利ではなく死ぬ権利 それをカミサマに奪われた

 

誰も彼もがいなくなって 思い出の中を彷徨い続ける

     たったひとりで終わりの見えないこんなに静かな教室で

あんなに大切だったあの娘の笑った顔さえぼやけてる

  それさえ失くしてしまったら もうなんのための今か分からない

誰も彼もがいなくなって 思い出の中を彷徨い続ける

       たったひとりで終わりの見えない後悔ばかりを繰り返せ

あんなに大切だった世界を手放した僕の未熟さを

   あの娘を守るそのために 選んだ手段の愚かさを

大切だったあの日々と時間 一緒に笑ったあいつらと同じ時間を歩いていけたら

        そんな願いは届かない 叶わない 戻らない 終わらない おまじない