今日も仕事で失敗ばかりで自分が嫌になるのも慣れた

 そういえば彼女と喧嘩してからもう一ヶ月が過ぎていた

どうでもいいやと一言で済ませられることは年を重ねて

    随分減ってしまった気がする そんなことを思う 帰り道

 

死んだら楽になれるのかなんて逃げ道はいつでも極論で

  暗い感情は奥のほうに閉じ込めるようにして歩いていた

 気付けば知らない街の中 目の前には古びた映画館が

    僕は吸い込まれるようにしてその映画館の中へ

 

上映中の映画はひとつだけ 僕はとりあえずそれを買って

 ガラガラの会場の席についた 視界が暗くなる

  どんな映画なのか分からないままで とくに期待をしていたわけじゃない

      ただ少しの間何もかも 忘れてしまいたくて

   そして映画は静かに 始まった

 

そこに映る人達の顔 そこで起きる幾つもの事

 どれもこれも身に覚えがあるものばかりだった これはまさに

僕が生きたこれまでの事 辛い場面は切り落とされて

            綺麗な思い出だけで綴られた映画だった あの頃のまま

観ていたいな 離れたくないな 忘れていたいな ずっとこのまま

 観ていたいな 帰りたくないな ここは僕にとって最高の居場所だと思った

 




 今日も彼と連絡は取れず あれからどれくらいが過ぎたかな

       突然の失踪のニュースも最近ではすっかり見なくなった

   どうでもいいやと一言で済ませられた気がして悲しくなる

「私があなたを絶対に見つけ出してあげるからね、大丈夫」

 

彼と二人でよく歩いた街を何日も何日もかけて

 何の手掛かりも掴めないままに今日も1日が過ぎていくだけ

   気付けば知らない街の中 目の前には古びた映画館が

                     私はそこで変わり果てた彼をみつけた

 

 

 

そこに映る人達の顔 そこで起きる幾つもの事

 どれもこれも聞いたことがあるものばかりだった これはまさに

彼が生きたこれまでの事 辛い場面は切り落とされて

            綺麗な思い出だけで綴られた映画だった あの頃のまま

観ていたいの? 離れたくないの? 忘れていたいの? ずっとこのまま?

 観ていたいの? 帰りたくないの? ここは彼にとって最低の居場所だと思った

 


ねぇ目を覚ましてよ ここはあなたの居場所なんかじゃない

綺麗事ばかりじゃない 何も報われないのかもしれない

 それでも それこそが あなたの居るべき世界なんだよ

   ねぇ一緒に帰ろう ねぇ一緒に帰ろう

 



そこに映る人達の顔 そこで起きる幾つもの事

 どれもこれも身に覚えがあるものばかりだった これはまさに

僕が生きたこれまでの事 辛い場面は切り落とされて

            綺麗な思い出だけで綴られた映画だった あの頃のまま

観ていたいな 離れたくないな 忘れていたいな ずっとこのまま

 観ていたいな 帰りたくないな ここは僕にとって最高の居場所だと思った

 

 

遠くで彼女の呼ぶ声がした気がして僕は我に返った

 そういえば彼女と喧嘩してからもうどれくらいが過ぎただろう

どうでもいいやと一言で済ませられることは年を重ねて

    随分減ってしまった気がする そんなことを思う 帰らなきゃ